Excelでエラーバー(誤差範囲)を付ける方法と、よくある間違い
2026-10-06
最初に決めること:エラーバーに何を使うか
エラーバーの長さには、主に次の3つのどれかを使います。
| 使うもの | 意味 | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| 標準偏差 | 繰り返し測定のばらつき | ばらつきの大きさを見せたい |
| 標準誤差 | 平均値の不確かさ | 平均値を点として打つ(最も一般的) |
| 測定器の不確かさ | 目盛りの読み取り誤差など | 各点を1回しか測っていない |
どれを使ったかで同じグラフでも意味が変わるので、図のキャプションに必ず書きます。標準偏差と標準誤差の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
データを準備する
ここでは、電流 を4段階に変え、それぞれ電圧 を3回ずつ測った例を使います。
| [A] | 1回目 | 2回目 | 3回目 | 平均 | 標準偏差 | 標準誤差 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1.0 | 2.0 | 2.2 | 2.1 | 2.10 | 0.100 | 0.058 |
| 2.0 | 3.9 | 4.1 | 4.3 | 4.10 | 0.200 | 0.115 |
| 3.0 | 6.0 | 6.3 | 6.0 | 6.10 | 0.173 | 0.100 |
| 4.0 | 7.8 | 8.1 | 8.4 | 8.10 | 0.300 | 0.173 |
Excelでは、1回目〜3回目が B〜D 列にあるとすると、2行目に次のように入力して下へコピーします。
| 列 | 内容 | 式 |
|---|---|---|
| E | 平均 | =AVERAGE(B2:D2) |
| F | 標準偏差 | =STDEV.S(B2:D2) |
| G | 標準誤差 | =F2/SQRT(COUNT(B2:D2)) |
ポイントは、誤差の値を点ごとにセルとして用意しておくことです。後でエラーバーの長さとしてこの列を指定します。
エラーバーを付ける手順
1. 散布図を作る
A列(電流)とE列(平均)を選び、「挿入」→「散布図」を選びます。折れ線グラフではなく散布図を使ってください。折れ線グラフは横軸を等間隔のラベルとして扱うため、物理量のグラフには向きません。
2. 誤差範囲を追加する
グラフを選び、右上の「+」(グラフ要素)→「誤差範囲」の右の矢印→「その他のオプション」を開きます。Mac版では「グラフのデザイン」→「グラフ要素を追加」→「誤差範囲」→「その他の誤差範囲オプション」です。
右側に「誤差範囲の書式設定」が開きます。
3. 長さを点ごとに指定する
縦方向の誤差範囲について、次のように設定します。
- 方向:両方向
- 終点のスタイル:キャップあり
- 誤差量:ユーザー設定 →「値の指定」
「値の指定」を押すと、正の誤差の値と負の誤差の値を入れる欄が出ます。両方に標準誤差の列(G2:G5)を範囲指定して OK を押します。
これで、点ごとに長さの違うエラーバーが付きます。
よくある間違い
組み込みの「標準偏差」「標準誤差」を選んでしまう
誤差量の選択肢には「標準偏差」「標準誤差」があり、つい選びたくなります。しかしこれは各点の誤差ではありません。
- 「標準誤差」:系列のY値全体から1つの値を計算し、すべての点に同じ長さで付けます
- 「標準偏差」:系列全体の標準偏差を計算し、系列の平均値を中心に描かれます
上の例だと、Excelは「2.10, 4.10, 6.10, 8.10 のばらつき」を計算します。これは電流を変えたことによる変化であって、測定の誤差ではありません。繰り返し測定のばらつきを表したいなら、必ず「ユーザー設定」で点ごとの値を指定してください。
「パーセンテージ」で適当に付ける
「5%」のように一律で付けると見た目は整いますが、根拠のない数値です。レポートでは「なぜその長さなのか」を説明できる値を使います。
負の誤差の値を指定し忘れる
正の誤差だけ範囲指定すると、負の側は既定値(多くは1)のままになり、上下で長さの違うエラーバーになります。両方に同じ範囲を入れたか確認してください。
横軸の誤差を消し忘れる
散布図に誤差範囲を追加すると、縦と横の両方に付くことがあります。横方向に誤差がない場合は、横のエラーバーをクリックして Delete で消します。横方向にも誤差がある場合は、同じ手順で横の誤差範囲にも値を指定します。横のエラーバーが選びにくいときは、「書式」タブ左上のプルダウンから「系列1 X誤差範囲」を選ぶと確実です。
近似直線との関係
エラーバーを付けたら、近似直線が各点のエラーバーの範囲を通っているかを見てください。
上の例を最小二乗法で当てはめると となり、どの点でも直線はエラーバーの中を通ります。これは「直線モデルで説明できる」ことの目に見える根拠になります。
逆に、多くの点で直線がエラーバーの外を通るなら、
- 誤差を小さく見積もりすぎている
- そもそも直線ではない(曲線近似を検討する)
のどちらかを疑います。この確認はグラフを描くだけでできるので、考察の材料として使ってください。直線の当てはめ方と傾きの誤差はExcelでの最小二乗法で解説しています。
Excelを使わない方法
ここまでの手順は、誤差の列を計算して範囲指定するところに手間がかかります。当サイトの曲線近似ツールは、データ形式を「誤差つき単一 (X, Y, Y誤差)」にして3列を貼り付けるだけで、点ごとのエラーバーが付いたグラフを描きます。
I [A] V [V] 誤差 [V]
1.0 2.10 0.058
2.0 4.10 0.115
3.0 6.10 0.100
4.0 8.10 0.173
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LaTeXでレポートを書いている場合は、LaTeXグラフ生成ツールで同じ3列からエラーバー付きのPGFPlotsコードを出力できます。
レポートに書くこと
図のキャプションには最低限、次の2つを書きます。
図2 電流と電圧の関係。点は3回の測定の平均、エラーバーは標準誤差を示す。
- 点が何を表すか(平均値か、1回の測定値か)
- エラーバーが何を表すか(標準偏差か、標準誤差か、測定器の不確かさか)と、測定回数
これがないと、読む人はエラーバーの長さを解釈できません。
まとめ
- 誤差の値を点ごとにセルで用意し、「ユーザー設定」→「値の指定」で範囲指定する
- 組み込みの「標準偏差」「標準誤差」は系列全体から1つの値を計算するので、各点の誤差にはならない
- 正と負の両方に範囲を入れる。不要な横方向のエラーバーは消す
- キャプションに「点が何か」「エラーバーが何か」「測定回数」を書く